中東の民主化ドミノはシナリオ通り?

中東の民主化ドミノはシナリオ通り?

チュニジアやエジプトで長期独裁政権が崩壊し、リビアでも1969年の革命以来40年以上にわたって強権支配を続けてきたカダフィ政権が崩壊の際にあります。原油相場は100ドルを突破し、民主化デモがイランに飛び火したことでさらに騰勢を強めつつあります。1バレル100ドルを超える原油高が定着すれば米国経済にも大きな打撃となりかねず、株式市場では動揺が高まっています。
中東の民主化運動

 

このような状況の中で、為替市場はまたもや「リスク回避」がキーワードとなり、安全通貨とされるドル、円、スイスフランが買われ、欧州通貨や高金利通貨が売られる展開となっています。また株から安全資産である米国債に資金がシフトし、米国長期金利が低下したことから、安全通貨の中ではドルが弱い展開となっています。はたしてこの「中東情勢緊迫→原油高・株安→リスク回避の円高」という連鎖は今後も続くのでしょうか。

 

私たちFX、株式投資家への影響が大きいこのテーマについて考えてみたい。

 

 

まず中東情勢の悪化について、筆者は国際政治学者ではないので今後の展開を政治学的・地政学的に予想することはできませんが、30年・40年と続いてきた(ある意味安定していた)独裁政権がなぜ最近になって急に揺らぎ始めたのかということを考えると、「先進国側の事情、特に米国のスタンスが変わった」という理由しか思いつきません。

 

もちろんインターネットの発達でこれまで国民に知らされていなかった情報が入ってきたなどの要因はあるでしょうが、はっきり言えばムバラク元エジプト大統領は米国にとって「用済み」となったのであり、米国の支援(資金面・軍事面)いう後ろ盾を失ったことがきっかけになって政権崩壊に向かったのだと思います。イスラエルと距離を置こうとする米民主党政権にとって、イスラム社会とイスラエルの橋渡しをしていたムバラク元大統領の利用価値が低下したと見ることもできるでしょう。

 

そう考えると、エジプトからリビアに反政府デモが飛び火し、今イランにも波及しようとしているのも、米国にとっては想定外だったはずはないと思えてきます。この二つの反米国家を親欧米の穏健国家に転換できれば中東の安全保障は大きく向上し、米国にとって非常にメリットが大きい。陰謀論にくみするつもりはありませんが、こうなったのは単なる偶然や民衆パワーの集結の結果ではなく、「シナリオ通り」だった可能性もあると思います。

 

この論点でさらに考えれば、民主的とは言い難いものの親米穏健路線であるサウジアラビアやカタール、バーレーンではエジプトのような政変は起こらないと予想できるわけです。米国にとってこれらの国に民主化や人権尊重を押し付けて混乱させても何の得もありませんから。

 

原油相場と株式市場の相関関係ですが、原油高は株式市場にマイナスというのは過去の経験則に照らせば全く当てはまらず、むしろ原油相場とNYダウは2008年のリーマンショックによる暴落以来ほぼ連動して動いています。(下記リンク参照。バーチャートがWTI、赤線がNYダウ)
http://mpse.jp/tkymail/c.p?12c6n2V1KAl

 

原油を産出するのは湾岸諸国でも、それを石油製品に精製して世界中に供給するのは米国を中心とした石油メジャーですから、原油高は米国企業にとってプラス要因でもあります。上記で述べたように中東の民主化ドミノが米国にとってシナリオ通りなのだとすれば、今後は株式市場が動揺から立ち直り、原油高と株高が同時進行する展開もありうるでしょう。

 

果たしてどこまでがシナリオ通りで、どこからが想定外なのかはわかりませんが、少なくとも現段階で株式市場はパニック状態に陥っているわけではありませんし、為替市場では「リスク回避」と言いながらも暴落している通貨はありません。エジプトもムバラク大統領の辞任をきっかけに混乱が収まっていていますし、リビアも同じかもしれません。ニュースの洪水に一喜一憂するのではなく、こういう時には一歩引いて相場の全体像を見渡してみることが肝心だと思います。
原油相場

 

 

(1) 中東情勢混乱は続く?

このところの外国為替相場は、混乱の続く北アフリカ・中東情勢に大きく左右される展開が続いています。北アフリカ、チュニジアの「ジャスミン革命」で、23年間続いた独裁政権が崩壊し、元大統領が亡命したことから、俄かに北アフリカ・アラブ諸国で民主化運動が活発化しました。続いてエジプトでも2月11日、約30年間大統領の座に座っていたムバラク元大統領が、高まる民衆の退陣要求に抗しきれずに退陣を発表、政権は崩壊しました。

 

チュニジアとエジプトに国境を接するリビアは、1969年にカダフィ大尉(当時)が無血クーデターで王政から共和制に移行して以来、カダフィ氏が40年余り事実上の国家元首として独裁的な体制を築いてきました。しかし周辺国の民主化運動の高まりをうけ、リビアでも反政府運動が急激に高まりました。カダフィ体制は、周辺国の中でも最も強権的であるとされ、当初は隣国での民主化運動が簡単には波及しない、と考えられていたにも拘わらず、短期間で反政府勢力が勢いを増し、現在すでに東部では反政府勢力が実効支配する状況となって、体制の移行は時間の問題と考えられるにまで至っています。

 

北アフリカ・中東のアラブ諸国は、多くは部族支配の延長といった体制の国々です。現在はリビアが焦点となっていますが、隣国のアルジェリアや、これまで磐石と考えられていたサウジアラビアでもデモが発生するなど、アラブ世界全体に波及する勢いを見せています。

(2)為替相場への原油相場の影響は?

リビアは、世界第8位の原油埋蔵量を誇る産油国です。これまでイタリア、ドイツなどに原油を輸出しており、そのリビアの政情不安で、生産量、輸出量が落ち込み、今後に関しても不透明感が高まっていることから原油価格は高騰、2年以上ぶりの高値をつけました。

 

このことが原油相場との相関関係の高いユーロドル相場を押し上げ、またリスク回避の高まりを通じて米長期金利を押し下げています。

 

これをうけて、中東最大の原油輸出国であるサウジアラビアが、余剰生産力を使ってリビアの減産分を増産する、と発表しましたが、他にもアルジェリアやイランなど周辺国でも民主化運動のデモが起きており、サウジの発表による原油相場の下げは一時的なものとなる可能性があります。

 

もしこの問題が、本格的に中東湾岸諸国に影響を及ぼすこととなれば、原油価格が急激かつ大幅に上昇することが考えられ、長期化することも予想できることから、世界的な景気回復が阻害されることが考えられます。原油価格の高騰は、その相関性を考えると短期的にはユーロ買いドル売りの材料と考えられます。しかし影響が長期化すると、世界的な景気回復が阻害されることになって、これまで利上げ期待で買われてきた、豪ドル、ユーロ、英ポンドなどの利上げ期待が後退し、売られると予想できます。

 

また世界景気の後退は、リスク回避の動きにつながり、為替相場でドル買い&円買いに繋がって、クロス円が下落することが考えられます。
原油価格

リビアをはじめとした中東の地政学的リスクが意識され、安全資産への逃避が 加速。インフレヘッジの観点から金への投資妙味が増し、スポット金価格は 市場最高値1433.4ドルまで一時上昇する場面も見られた。 今後の中東情勢次第では、原油価格高騰により世界景気が後退するとの懸念 から、安全資産への逃避が更に強まり、金価格は1450ドルを試すとの観測も強 まっている。為替相場でも大きな波乱があるだろう。